ワイマール憲法の所有権について

こんにちは。ご質問ありがとうございます。


これはワイマール憲法の153条3項に書いてある条文ですね。

これによって、近代的所有権から現代的所有権の変遷がはかられたと解されています。


これ以前の段階(近代的所有権の段階)では、「所有権は絶対的な権利」とみなされていました。

例えば、フランス人権宣言の17条には、

「所有は不可侵で神聖な権利である」

と書かれていますので、基本的に所有権は侵すことのできない絶対的な権利と考えられていた、と言われています。(絶対王政の時は、所有権が保障されていなかったので、仕方がない事とも考えられますが…)


ただ、この「所有権は絶対」という考え方に従うと、さまざまな矛盾が出てきます。


例えば、住宅街のド真ん中にある工場がその土地の「所有権」を主張して、騒音や振動を発生させて工場を稼働させていたら、近隣に多大な迷惑を掛けます。


こういうことが起こり得るので、所有権は、次第に「社会的に一定の制約を受ける」権利だと考えられるようになります。これが、現代的所有権だと考えられています。


そして、この現代的所有権を表したのが、ワイマール憲法の153条3項

「所有権は義務を伴う。その行使は、同時に公共の福祉に役立つべきである」

という条文だと言われています。


ここから、条文の解釈は、「所有権は、(一定の社会的責任を負う)義務を伴う。その(社会的責任を伴った義務の)行使は、同時に(=すなわち)公共の福祉に役立つべきである」ということではないのか?と考えています。(残念ながら、条文の解釈について調べてみましたが、条文全体の大意の解釈は見受けられるものの、「義務」という言葉が何を指すのかという個別の言葉に関しての解釈は見受けられませんでしたので、ここは学説等で述べられているのではなく、後藤の注釈になります。)


要は、「所有権はもちろんあるんやけど、所有権には公共の福祉のための一定の社会的責任が発生するから、そこにはちゃんと従ってね!」ということだと思われます。


先程の住宅街のド真ん中にある工場の例だと、公共の福祉の下に、土地を買い上げることが想像できます。その場合は、ちゃんと土地の所有権を渡す義務があるんだよ、と。そういうことだと思います。


日本国憲法も、このような考え方に基づいています。日本国憲法29条の2項と3項です。

日本国憲法29条では、


第1項 財産権は、これを侵してはならない。

第2項 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

第3項 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。


とあります。

第2項では、公共の福祉に適合させるために、財産権には一定の制限が加わることが明示されていますし、第3項ではより具体的に私有財産を公共のために用いることが示されています。(もちろん、正当な補償があってとのことですが…)


ということで、この条文も「所有権は絶対」という考え方(近代的所有権)ではなく、「一定の制限が加わるよ!」という考え方(現代的所有権)に立脚して作られていると考えられます。


で、その現代的所有権の考え方を最初に言ったと考えられるのが、ワイマール憲法の153条、と。そういう関係だと考えてもらえればよいかと思います。


ご質問、ありがとうございました!また何かわからないことがあれば、ご質問ください。

よろしくお願いします。

質問への回答(後藤貴士)

質問箱へいただいた質問の回答をしようと思います。

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