内閣の政令制定権
共通テスト倫理、政治・経済で出てきたヤツですね。
誤解のないよう申し上げておきますが、これは「実際には存在しない権利」です。もし存在すると、仰る通り国会以外の立法に抵触しますが、存在しませんのでご安心を。
まず前提知識ですが、行政府が制定するルールのことを「命令」と言います。内閣が出すものは「政令」、中央省庁が出すものは「省令」と言われますが、どちらも「命令」にカテゴライズされます。
命令には、3種類あるとされています。①独立命令、②委任命令、③執行命令です。結論から言うと、日本国憲法下の政治では①は認められておらず、②③は認められています。以下、1つずつ説明します。
①独立命令について
独立命令とは、「法律に代わる命令」とも言われており、法律の存在無しに出せる命令です。大日本帝国憲法下では、天皇が独立命令を出せる権限を持っていました。天皇大権の中の1つである「緊急勅令を発する権利」がこれにあたります。ただ、この命令が議会を経て制定された法律と矛盾すると困るため、日本国憲法下の統治では禁止されています。
②委任命令について
「委任立法」という言葉があるように、法律の委任に基づいて具体的な中身を定めるために制定される命令です。法律の具体的な中身を定めるとともに、それに従わなかった場合の罰則を定めることができます。内閣の政令制定権の勉強をした時に、「法律の委任がある場合にのみ罰則を設けることができる」という事項を学習したと思いますが、このことです。これは、命令の背後に法律の存在がありますので、日本国憲法下でも制定して良いこととなっています。
③執行命令について
国会で可決された法律を執行するために定める細かな命令です。罰則は制定できません。これも命令の背後に法律の存在がありますので、日本国憲法下でも制定して良いこととなっています。
ということで、「内閣の独立命令制定権」とはダミーの選択肢のために作った「実際には存在しない権利」です。ご安心を。
①②③は細かい事項なので、最悪忘れてもらっても構わないですが、1998年頃に一度だけ「内閣は法律に代わる政令を制定できる」というダミーの選択肢が出てきたので、満点近い点数が欲しい人は覚えておいた方が良いかも知れません。
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